
Visit Oresund VOl.3<2003年3月11日(火)【一般】12日(水)【press】>
ゲスト「Kasper Salto(キャスパー・サルト)」
デンマーク大手家具メーカーフリッツハンセン社(Fritz Hansen)
の椅子「Ice(アイス)」や「Runner(ランナー)」などを手がけた家具デザイナー、キャスパー・サルト。
デザインに対して決して妥協を許さないというキャスパーが、自身のこと、
作品を通じてデンマーク家具について語ってくれた。
(この日、Red Dot Awardの受賞の知らせを受けたキャスパー。会場から
暖かい拍手を受け、和やかなムードでトークが始まる)
アート一家で育ったキャスパー
灯台の建築家、陶芸家、画家、自身は家具デザイナーと、とにかくアートな環境が
出来上がっているキャスパー一家。建築家だった祖父の影響を多く受けて育った。
祖父、親、自分と、だんだん創るものが小さいものになっているため、
3歳になる愛娘は何を創るのか、いまからとても楽しみだと頬をゆるめる。
大の車好きだと熱く語るキャスパーは愛車をスライドで紹介。オアスン橋も愛車で
走るのだという。また、自宅の写真も紹介。キッチンや仕事場をはじめ、
スタイリッシュな部屋を披露。ネコやガールフレンドも登場!
趣味はなんとプロペラ収集で、プロトタイプのものもたくさん持っているという。
スケッチも好きで、何気ないところからも多くインスピレーションを受けているという。
大好きな工房から生まれた作品の数々を披露
自身の作品のことについて語り始めると、キャスパーはよりいっそう熱く語り始めた。
初めに紹介してくれたのは、デザインスクールで作った最初のチェアの写真。
「生産には至らなかったけどね」と懐かしそう。
キャスパーの一番好きな場所は「工房」。そこから有名な「Runner」も誕生した。
キャスパーは、工房から繰り出される作品たちをひとつひとつ丁寧に説明する。
Red Dot Awardを受賞した「skater」は、パーツ3つのみで成り立っているイス。
また、“紙”からヒントを得て生まれた「leaf」などは絶妙な曲線を描いた美しい
作品である。Danish Design Centre(DDC)で現在使われているテーブル&チェアも
キャスパーの作品「blade」シリーズ。ちなみにキャスパーはDDCのショップデザインも
手がけている。
「bone」シリーズのテーブルは足が3つで構成されていて、軽やかさとすっきり感を
演出。テーブルの真ん中に穴が空いているのは、セミナーやカンファレンスで使う
機械類のケーブルを通すためのもの。テーブル上や脇にケーブルがゴチャゴチャ
しないよう配慮されている。
未来のインテリア、生産の予定は・・・?
さらに、キャスパーは興味深い作品を紹介してくれた。
それは、「The Future Way of Working」というテーマで作られた“ベンチ”。
フリッツハンセン社の協力で作ったという未来を見据えたインテリアだという。
未来の仕事用ベンチはアルミ製でシート部分はブリッツという素材を使用。
今後、働く人は会社へ出かけていくというライフスタイルから、自宅で仕事をする
時間が長くなる人が多くなっていくといわれている。だから、仕事も休息もこのベンチ
1つあればOKとキャスパーは目を輝かせる。
仕事で疲れたら幅広のベンチに横たわって寝ることも出来るし、突然良いアイデアが
浮かんだ時はクッションを引っ張って、サッとテーブルを出すとノートブックパソコン
などで仕事がすぐにできるといった多機能ベンチなのだ。
「ニーズがあれば、生産するかも?」と笑っていたが、探究心と好奇心でこれからも
いろんなライフスタイルに合わせた作品づくりを追求していく姿が想像できる。
「Ice」チェアに詰まった想い
最後に、今年日本でも扱われるようになったキャスパーの自信作「Ice」について
語ってくれた。キャスパーらしい繊細でシンプルなフォルムの「Ice」には、
彼のこだわりと数々の計算が詰まっている。
そもそも「イス」とは、キャスパーにとってどういうものなのか?
まず、イスに大切なのは「美しさ」。
「見た目はまるで彫刻のようでなければならない」とキャスパー。どの角度から
見ても美しくあること、それは一見見えないような下からの角度もそう。
次に大切なことは、「機能的であること」。座っているとき、“イス”という
存在を忘れ、自分のやっていることに没頭できるくらい心地の良いもので
なければならないという。確かに、座り心地の悪いイスだと腰が痛くなったり
座っているだけなのに疲れたりするもの。キャスパーはイス本来の機能を
責任持って美しく仕上げたといえる。
キャスパーは「Ice」の細部の構造についても熱心に語ってくれた。
「Ice」は背もたれあたりからスーッと細くなっているのが特徴的。
座ったときに柔らかく、フレキシブルで心地良いと感じるように考えられた
こだわりの部分である。また、スタッキングしたときの美しさも考慮。
上に積み重ねていくとき、広がらず細くなっていくようにしたかったという。
さらに、「Ice」は室内・室外兼用という機能も備えている。例えば、プールの脇に
置いても、水が流れるような内部構造になっている。室内外兼用のイスを作るのは、
フリッツハンセン社では初めての作品で、完成までに5年かかったという。
今年度、デンマーク家具産業が設立した「Furniture Award」の受賞者にもなった
キャスパーは2003年も確実に進化し続けている。今後どんな作品がキャスパーから
生まれていくのか、非常に楽しみである。
Kasper Salto(キャスパー・サルト):
1967年生まれ。1988年キャビネットメーカーとしての実務教育を終了し、1993年スイスの
アートセンターでの教育を経て、1994年デンマークのデザインスクールを卒業。1996年デザイン
コンテスト、1997年Bo Bedreコンテスト、1999年IDアワード、日本Gアワードなど数々の賞を受賞。
2002年デンマークキャビネットメーカー協会にてデザインアワードを受賞。
1996年〜1997年には、コペンハーゲンのアートアカデミースクールの建築学部家具工芸課にて講師
を務める。
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